英検 が終わったらクールダウンしましょう

2015年度第2回英検 が終了しました。受験した会員の皆さん、お疲れ様でした。今回も、中高生を中心に、夏休み期間中から対策授業で準備をし、ほとんど全員が無事二次試験まで進みました。結果が出るのはまだ先ですが、結果はどうであれ、目標に向かって努力した自分を褒めてあげましょう。

英語習得は英検 合格が全てではありません。(上級者になれば、資格試験では問われない部分に次第に意識が向くようになります。)ただし、受験すると決めたなら全力で取り組むべきです。また、中高生の場合は一定期間内に相応の実力をつける上で有益であり、努力すれば大きな成果が期待できます。

大学や高校入試は本気で取り組むけれど、英検は記念受験でいいという考えの人もいるかもしれませんが、そのような考えには賛成できません。なぜなら、人間はそれほど器用な生き物ではなく、基本的に楽をしたがる性質があるように思うからです。一つの試験に中途半端に取り組んでしまったと思う場合は、それが他の試験に悪影響を与ないよう注意しましょう。

ただ、さすがに英検対策で少し疲れた人もいることでしょう。そのような時は、武道やスポーツの場合と同様、軽いストレッチのつもりでクールダウンすることをお勧めします。つまり、試験モードから日常モードに上手に切り替えましょうということです。一生懸命勉強しすぎて「しばらくは英語自体もう結構」と思うことのないよう願うばかりです。

実用英検 のリーディング問題には、環境問題や国際政治に関する問題等、固い内容の題材も使用されるので、試験後はDVDやCD、さらにはKindle等で、好きな映画や音楽、小説の一部を使って、口直しの意味で軽く音読することをお勧めします。私の場合、クラシックからハードロックまで音楽の趣味は広いのですが、少し疲れたなと思う時は、中高生時代によく聴いたOlivia Newton JohnABBAを聴きます。あとは、Kazuo Ishiguroなど綺麗な英文の一節を音読したりします。そして気力やエネルギーが回復したらまた通常の多読・多聴生活に戻るというパターンです。

普段の授業で感じるのは、特に社会人の方々の英文リーディング量が少ないということです。実用英検 2級レベルに到達したら意識的にリーディング量を増やすことを心がけてください。小説やフィクションにはプロの作家が何度も書き直したりして完成させた、気の利いた英語表現が満載です。英会話のテキストを使うことだけが英語上達の道ではありません。

普段どんな本を読んだりDVDを観たりするのかと聞かれることもあるので、参考までに最近読んだり観たりした本やDVDの一部を挙げておきます。

1. World Order

World Order: Reflections on the Character of Nations and the Course of History

学生時代の専門が国際政治学だったこともあり、この人の本は外せません。

2. House of Cards

House of Cards (House of Cards Trilogy)

Kevin Spacyが主演した米国リメイク版DVDが知られていると思いますが、原作は英国人作家によるものであり、BBCがTVシリーズを製作しています。次に挙げるA Most Wanted Manや、あとはWolf Hallなどもそうですが、このようなシニカルな作品は英国ならではのものではないかと思います。

3. A Most Wanted Man

A Most Wanted Man (English Edition)

言わずと知れたJohn Le Carreの作品。この作家の作品を読むことが人生の一部になっています。映画版ではPhilip S. Hoffmanが渋い演技を見せています。年齢を重ねるにつれ、また国際政治を深く知るにつれ、共感できる部分が多くなっていきます。

4. Wolf Hall

ウルフ・ホール (上)

ウルフ・ホール (下)

House of Cardsは現代政治がテーマであり舞台ですが、本書は16世紀英国が舞台です。高校の世界史の授業では軽く聞き流した人もいると思いますが、大人になってからこのようなテーマの本を読むと、色々な読み方ができて楽しめると思います。英国ではTVシリーズとして放映されており、俳優のDamian Lewisがヘンリー8世の役で出演しています。

5. 刑事コロンボ

刑事コロンボ コンプリートDVD-BOX

最近になって子供の頃に観た「刑事コロンボ」シリーズをなぜか急に観るようになりました。当時は小池朝雄氏の吹き替えで楽しみましたが、今は英語表現の収集も兼ねて英語版で観ています。一話完結なので、気軽に観ることができます。

私は大人の男性なので、女性や中高生とは嗜好が違うかもしれません。皆さんも、それぞれ自分自身で英語習得の楽しさを見つけてエンジョイしてください。

所蔵テキスト: Adventure Stories, Travel Stories

当アカデミーの本棚には大量の本があり、初めて来た人はみなさんびっくりするようです。これらの本を置いているのは、会員の皆さんにできるだけ多く良質な本に触れてほしいからであり、人に見せびらかすのが目的ではありません。自宅にはもう置き場所がないというのは内緒です(笑)。

特に、中学・高校生の読書量の少なさには危機感を感じており、英語・日本語を問わず良質な本を紹介することも大切だと考えています。これらの本は、会員であれば学年を問わず自由に読んだり借りたりできます。

MacMIllan Readersは、Level 1 – 7 まであり、以下の2冊はその頂点に位置するLevel 7シリーズに含まれています(CEFRではC2)。個人的には旅行や単車でのツーリングが好きなこともあり、The Lawless Roads (Graham Greene)Long Way Round (E. McGregor & C. Boorman) が面白いと思います。さらには第二次大戦中の英軍パイロッについて描いたThe Sun Rises Twice (H.E. Bates) もおすすめです。ただし、平均的な英語学習者にとっては文章や語彙の難易度が高く、対象となる読者は社会人も含めた上級者ということになるでしょう。中高生向けの本もたくさんあるので、順次、ご紹介します。

  • Adventure Stories (MacMillan Literature Collections)
  • CEFR: C2

MacMillan Literature Collections Adventure Stories Advanced Level (Readers)

  • Travel Stories (MacMillan Literature Collections)
  • CEFR: C2

Travel Stories (MacMillan Literature Collections)

リベラルアーツへの導入教育としての多読学習

当アカデミーでは、中高生を対象に、多読学習を取り入れています。
もちろん多読学習だけをやっているわけではありません。あくまでも通常の授業に加えて取り入れているということです。

使用するテキストはOxrord BookwormsなどのGraded Readersです。
読みのペースは各自に合わせて調整します。あとは分野が偏らないように幅広いジャンルから読むように指導しています。

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多読学習の向こう側には、リベラルアーツを射程として捉えています。
リベラルアーツとは、多様な価値観の下で、多元的・複眼的な思考を身に着け、人間を理解するための基礎学問のことです。

これから先少なくとも10年、さらにその先の20-30年は変化・変動の時代であり、そこで求められるのは、幅広い知識に加えて多様な他者、世界と対話する意思や能力、行動力です。

英語は、仕事や環境によっては「できたらいい」から「できて当たり前」になります(いわゆる「ぺらぺら」になるということではありません。各自にとって必要な英語ができればいいということです)。できて当たり前の環境で問われるのは言うまでもなく英語力プラス自分自身の価値観や世界観です。

最近の国際関係では、クリミア半島や捕鯨問題などがクローズアップされていますが、これらの問題には、土地の帰属や捕獲量といった目に見える対立以外に、他国の問題に介入することは妥当か否か、人間と自然との関わり合いはどうあるべきかといった「世界観」のレベルでの対立があります。

また最近では、TOEFLなどの外部試験の導入が議論されていますが、TOEFLの場合、英語力を単なる「スキル」と捉える考え方では不十分で、リベラルアーツに対する理解、基礎知識が必須となります。日本で主流なTOEICや国内の学校教科書と同じ次元で論じることはできません。

自分のキャリアを国際的な次元で捉え、留学を視野に入れている高校生は、現在の学習でほかに目を向けるべきことがないかどうか、よく考えてみることをお勧めします。

企業の英語教育に多読を導入することの効果と意義について

過去に企業から英語研修の依頼を受けたことがあるからわかるのですが、
一般的に、企業における英語研修とはTOEIC研修を指す場合が多いと思われます。
研修予算に余裕のある企業は、TOEICにプラスしてネイティブの会話トレーニングを行うこともあるでしょう。

国内、特に富山という地方性を考えると、TOEICなどの試験対策に傾注するのは理解できることであり、一定のプラス効果はあると思います。

私自身は、自分の英語力強化に最も役立った方法は何かと聞かれたら、「多読」であると答えることにしています。
高校生時代から富山駅の売店でStudent Timesなどを買い、お世話になった大学・大学院でも、ほぼ毎日英文を読む必要に迫られたため、意識せずに「多読」していたと言えます。

ふつうの日本人がこのような環境下に身を置くことは多くないと思われるため、「多読」は極めて意識的な学習行為になります。
また、企業研修等で「多読」を行おうとしても、結果を数値化できなかったり、短期的に学習効果を実感できなかったりする場合が多く、担当者の理解を得ることも難しいでしょう。

そのようなことを考えていたら、素晴らしい記事を発見しました。東洋経済オンラインの記事「新人に英語本500冊を読破させる会社 クレハ、超過劇な英語勉強法」です。この記事によると、クレハでは新人社員に対し、3年間で500冊の本を読ませるとのことです。具体的には、「辞書を引かずに3年間で300万語」ということだそうです。読書に慣れていない若者(オジサンも)にとっては、頭が痛くなるような内容ですが、PenguinやMcMillanなどを使用しているとのことで、最短5分で読めるものもあるそうです。

また、この記事では、中国人の新人社員に対して、「日本に住めば日本語は覚えられる。それよりも、英語をブラッシュアップさせ、高度な技術英語を駆使できるように」発破をかけているとのことです。

このような企業や上司のもとで鍛えられる若者は幸せですね。