世の中には、英単語はただひたすら暗記するものという考え方が一部にあるようです。実用英検を受験する際に、膨大な量の単語を覚える必要があることも理由の一つだと思います。
当アカデミーでも中学・高校生のすべてが実用英検を受験することから、対策の一環として単語の暗記に取り組みます。ちなみに、中学2年生で実用英検2級、1年生で準2級等、一般的な中学生にとっては難易度の高いレベルでの合格者を出しています。
しかし、暗記に頼る方法は英単語を身に着けるための唯一の方法ではなく、このことは生徒にも説明しています。暗記はあくまでも試験「対策」であり、短期的な記憶の保持を目的としているにすぎません。
一方で、英単語は「暗記」や「対策」という固定観念を取り去ることでより広い世界が見えてきます。例えば、英語の母国は英国ですが、同国の大部分を占めるブリテン島は大陸から近いこともあり、古くから多くの民族が行き来を繰り返していました。このため、英単語には、元をたどればドイツ語やスカンジナビアの言語、さらにはフランス語やギリシャ語、ラテン語など多くの言語から単語が流入していることが分かります。
通常、これらの情報は辞書の語源欄に記載されています。そしてこのような情報に目を通すことで、単語の意味といった表面的な知識を超えた「語感」を養うことができます。ただ残念なことに、最近の辞書ではこのような語源の説明が省略される傾向にあります。日本の学習英和辞典は大変優れていますが、これは少し残念な点です。コミュニケーション志向の高まりとともに、辞書の役割も変化しているということでしょう。
このような時代の変化を考慮しつつ、同時により深く語彙に意識が向くよう、教室の机の上には『ジーニアス英和大辞典』を置き、生徒が自由に使えるようにしています。ちなみに、「souvenir」の欄には語源(下線部)が次のように記載されています。
●「souvenir」:
〚初18c;ラテン語 subvenir(心に浮ぶ).「sou-(・・・に)+venir(来る)=心にやってくる」〛名C〔旅・出来事などの〕記念品, みやげ(memento)〔of,from〕◇「自分の思い出のために買った物」の意で使うことが多い;
ついでに英英辞典も見てみましょう。Collind COBUILD Advanced Learner’s English Dictionary, 5th Edition, 2006ではフル・センテンスで以下のように定義されています。
A souvenir is something which you buy or keep to remind you of a holiday, place, or event.
Longman Dictionary of Contemporary English, 5th Edition, 2009 (LDCE)では以下のような例文が見つかります。
I bought a model of the Eiffel Tower as a souvenir of Paris.
洋の東西を問わず、みやげや記念品は大切にするということでしょう。ただし、「souvenir」の場合、人のためというよりは自分の思い出のためというニュアンスが強いことが分かります。18世紀以前の英単語はどうだったの? という素朴な疑問は大切にとっておきましょう(笑)。それくらいの気持ちの余裕は持っていてもいいと思います。
英単語と日本語をセットでただひたすら暗記する方法は、いわば2次元の知識の習得方法です。一方、語源やコンテクストに配慮する方法は3次元の習得方法です。すでに前者の方法を実践している場合、後者の方法に少し意識を向けることで、より深い語彙の知識が得られます。
単語を単なる暗記の対象としてしか見ない場合、特に大学入試で未知の単語に遭遇した時に苦労します。なぜなら、記憶にない単語が出たらどうしようという不安が消えることはないからであり、記憶になければその時点でお手上げになるからです。このため、普段の授業では、中学生・高校生共に、語源や語幹、接頭辞、接尾辞等を含め、コンテクストを意識しながら体系的・体感的に語彙の知識が身につくよう配慮しています。