実用英検・一次試験(2018年度第2回)が無事終了し,当塾では現在,二次試験合格に向けて授業を行っているところです.二次試験まで時間があまりないので,授業では音読や面接の練習を中心に進めていますが,必要に応じ,1級と準1級を中心に一次試験の見直しも行います.
今,問題冊子を見ながら分析を行っているところですが,今回も非常に興味深いテーマが出題されました.特に,1級ライティングのテーマ ‘Has a university degree in the humanities lost its relevance in today’s world?’ は素晴らしいですね.前回のテーマ ‘Agree or disagree: Japan will benefit overall from hosting the 2020 Summer Olympics?’ と比較すると,抽象度のレベルが高く,やはり普段から地道に物事を考えていないと,即座に3つの理由を提示するのは難しいかもしれません.私自身は,このテーマを見た途端,拍手を送りたい気分になりました.
普段から生徒には,傾向や対策といった表面的なテクニックのみを求めて彷徨うのではなく,世の中の動きや歴史に目を向け,なぜこのようなテーマが出題されるのか,出題者は受験者の何を見極めたいのか,じっくり英文と対話するよう意識づけを図っています.安易でお手軽な方法がもてはやされるこの時代に,高度な英文と格闘し,自らの意見を述べさせることが指導方法として適切なのかどうか,自問自答する毎日ですが,そのようなやり方に付いてきてくれる生徒がたとえ少数でもいる限りは,地道に頑張って指導を続けようと思います.
以下は,私が大学生(学部生)のときに,所属ゼミで指定された参考文献の一部ですが,これらは,私がその後大学院で研究したり,人生を生きていく上で,まさに糧となった「人文・社会科学」の名著です.
ナチズム時代の大衆・心理分析を通して,なぜ人々が自由を捨て,自ら独裁政治に身を委ねることになったのか,社会心理学の観点から検証しています.いつの時代も,人は自由を求める一方,人と違うことには強い抵抗を覚えるのかもしれません.
“History is an unending dialogue between the past and present(歴史とは,過去と現在との不断の対話である)” というフレーズが有名.歴史の碩学がどのように過去や現代を見ているのか,言い換えれば,彼ら歴史家の目を通して歴史を見ることで,学べることは多いと思います.
どこの国でも,またいつの時代でもそうですが,国際政治について冷静に議論することは難しいのだと思います.第一次大戦の惨禍を経験した国々が,なぜ戦後の平和な時代に別れを告げ,第二次大戦の道へと歩み寄っていったのか,孤独と絶望の中で,迫り来る戦争の時代を著者は怜悧に見据えています.